つい、お米を食べたくなる
そんなお話。
サカタインクス株式会社
事業内容 :各種印刷インキ・補助剤の製造・販売
印刷用・製版用機材の販売
電子機器・情報関連機材の販売
機能性材料関連品の製造・販売
輸出入
本社所在地 :大阪本社:大阪市西区江戸堀1-23-37  東京本社:東京都文京区後楽1-4-25(日教販ビル)
話者 : 松浦敦史様 奥野誠二様
ウェブサイト : https://www.inx.co.jp/
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米ぬかを材料の一部に使用した「ライスインキ」を開発!ボタニカルインキで描く持続可能な印刷の未来。

普段、口にするものとして認識されているお米。実は、加工業者によって様々な製品へ活用されているのをご存知でしょうか。国内外の印刷インキ業界で高いシェアを誇るサカタインクスでは、植物由来原料を用いたインキの研究・開発に早くから取り組むなど、情報メディアやパッケージといった印刷物のサステナブル製品化をリードしています。同社の独自ブランドである「ボタニカルインキ」について開発経緯を伺うとともに、印刷物の未来へ向けたお話を伺いました。

環境配慮型の一歩先へ

サカタインクスでは、1896年の創業以来、120年以上にわたり、環境に配慮した高機能・高付加価値製品を提供してきました。弊社の印刷インキは、新聞、雑誌、チラシ、ポスターといった情報メディア、食品、飲料品、日用品、化粧品のパッケージなど、幅広い分野で活用されています。

2015年に国連が発表した「SDGs」により、印刷業界は大きな変動を迎えました。特にパッケージは、インキやフィルム、プラスチック容器など石油由来の原料が使われることも多く、廃棄して焼却される際に排出されるCO2などの温室効果ガスや、河川や海への流出による海洋汚染への問題があったからです。

弊社では、SDGsが発表される以前から、大豆油を使用した植物油インキなど、環境に配慮した製品の研究・開発を進めてきました。

SDGsが世界共通用語として認識されるなか、消費者への認知やステークホルダーとの信頼関係を構築していくには、ただ「環境に配慮しています」というコンセプトではやや訴求力に欠けました。そのため、業界をリードする企業として、2016年より新たに独自の付加価値を提案できる取り組みを行ってきました。

環境配慮のボタニカルインキとは

弊社が取り扱うオリジナルインキに、植物由来の原料を使った「ボタニカルインキシリーズ」があります。「植物の」という意味の「ボタニカル」がその名の由来です。最近よく耳にする「バイオマス」とは、動植物由来のもので、化石資源を除いた再生可能な資源のことを言います。弊社のボタニカルインキは、この日本有機資源協会の「バイオマスインキ」としても認定を受けておりますが、バイオマスインキには動物由来の資源が含まれるのに対し、弊社のボタニカルインキは、植物由来材料に着目した完全オリジナルインキとして商標登録認定を受けています。

このボタニカルインキシリーズの一つとして、植物由来の中でも更にお米由来に限定したインキを2016年に開発しました。それが「ライスインキ」です。ライスインキの原料は、米の副産物である米ぬかを資源として利用しています。そしてその米ぬかの非可食部を有効活用することで、食物資源の食用としての活用を侵食しません。また、国外からの資源の輸入に頼る必要がなく、輸送マイレージ(CO2排出量)削減にも貢献できます。

おかげさまで、ボタニカルインキをはじめとする環境配慮型インキは、弊社の国内販売において70%を超えています。特に、ボタニカルインキは、「ボタニカル」というブランドネームが消費者への訴求力もあるため、大手コンビニエンスストアのプライベートブランドや食品パッケージ、衛生用品、ファーストフードチェーンの紙コップや包み紙、お持ち帰り用の紙袋などに採用されており、環境配慮を意識する企業の取り組み表明として、それぞれのパッケージなどに弊社のボタニカルインキマークが印刷されています。

持続可能な社会を目指して

弊社は、企業としての社会的責任を果たすため、環境に配慮した製品の提供を重要視しています。「大豆油インキ」も植物由来材料ですが、世界にはまだ飢餓で苦しむ人々が多く存在するため、食べられる大豆をインキの原料に使用することには抵抗があります。消費者の意識の高まりもあり、現在、大豆油はほとんど使用せず、再生油が中心となっています。

廃プラスチックによる海洋汚染やマイクロプラスチックの問題も深刻です。パッケージも例外ではなく、プラスチックのバイオマス化が進むなか、弊社もパッケージに関わる企業としての責任を果たすことが重要であると考え、このような独自ブランドを立ち上げました。ボタニカルインキシリーズは、インキ固形分中(樹脂や添加剤など)10%以上の植物由来の成分を使用するインキとして展開しています。また、2023年7月には、グラビアインキに使用されている溶剤を100%バイオマス由来の酢酸エチルに限定したボタニカルインキの新シリーズ開発に成功しました。

これらのボタニカルインキやライスインキの開発には多大なコストがかかります。弊社はそれでも環境配慮を最優先に考え、コストを低減しながらさらなる製品性能の向上に向けて研究を進めてきました。これは、印刷インキ業界の先駆者として、環境に配慮した製品を提供する使命を果たすための重要なステップと考えています。

また、これらのステップは、SDGsの目標12「つくる責任、つかう責任」に対応し、持続可能な生産と消費の実現に貢献できます。ESGの観点からも、環境(Environment)への配慮は企業の評価に直結します。食料資源を節約し、環境負荷を軽減することで、当社の環境パフォーマンス向上につながり、社会(Society)やガバナンス(Governance)への取り組みとも連携することで、当社と社会の持続可能性を高めることができると考えています。

サーキュラーエコノミー実現による印刷業界の展望

ボタニカルインキシリーズに次ぐ取り組みとして、2024年4月から、印刷関連業界における廃棄物のサーキュラーエコノミー実現に向けた実証実験を開始しました。サーキュラーエコノミーとは、「使い捨てる」から「循環させる」へと転換する考え方で、使い終わった製品をリサイクルして再利用する、もしくは分解して新たな製品の原料として再利用することで、資源の有効活用を図ります。

現在、印刷関連業界におけるサーキュラーエコノミーの実現を目指し、さまざまな実証実験を行っています。例えば、使用済みのインキや金属容器などを回収し、再加工することによる、環境面、品質面、経済面での有用性の検証に取り組んでいます。また、「サーキュラーエコノミーインキ」の開発によって、資源の循環利用が促進され、業界全体に対する持続可能なビジネスモデルの提供が可能になります。

さらに、このサーキュラーエコノミーの概念は、企業だけでなく、消費者にも新たな価値観を提供します。製品をただ使い捨てするのではなく、循環させることで、環境に対する責任を共有し、共に持続可能な未来を創造することができます。

今後も、「環境のサカタ」として、環境に配慮した高品質で高機能なインキの開発に取り組み、すべてのステークホルダーと共に当社製品を通じた新たな可能性を創造し、業界全体の持続可能な発展に貢献していきます。

 

 

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