日本初の動力式精米機を開発して以降、世界約150ヶ国に事業を展開してこられた、株式会社サタケ様。特に大規模事業者向けの大型精米プラントで、高いシェアを誇っています。拠点は、広島県東広島市。地域とともに取り組んでいる持続可能な農業や、環境に配慮して行っている事業について、お話を伺いました。
弊社は、お米を刈り取ってからご飯になるまでの過程を対象に事業を行っています。
穀物乾燥調製施設や精米プラントなど、収穫から精米までの全工程で使用される機械や設備の生産をはじめ、お米の加工技術を応用した製粉機械も取り扱っています。米粉用の製粉機械もあり、米粉100%でパンを製造する特許も取得しています。
食品分野では、マジックライスを販売しています。お水やお湯を入れるとご飯ができあがる商品です。アウトドアや非常用の保存食として、多くのシェアをいただいている商品です。
他にも、バイオマス発電プラントや、高始動特性モータなど、多種多様な事業展開を行っています。
弊社では、「未利用資源の有効活用」をスローガンに、環境にやさしい取り組みを行っています。
その1つが、もみ殻を利用したガス化発電システムです。あまり有効利用されていないもみ殻を使ってエネルギーをつくる設備を開発しました。
また、精米工場で無洗米を製造する際に出るとぎ汁も有効活用しています。そのとぎ汁のことを、「排水」ではなく、「洗米副生水(せいまいふくせいすい)」と呼んでいます。工場から出た「洗米副生水」は、たんぱく質や脂質が含まれています。栄養豊富なため、養豚向けのリキッドフィード(液体飼料)にも活用できるのです。無駄にすることなく再利用できるので、環境にやさしい仕組みになっています。
食の多様化によって、お米の消費が減っています。「炭水化物ダイエット」とも相まって、特に若い世代での米離れが顕著です。
炭水化物ダイエットは、その名の通り、炭水化物を抜いて減量するダイエットですが、個人的にはおすすめしません。炭水化物は、飢餓などの非常時に備えて、蓄えられる性質があります。炭水化物を食べなくなれば蓄えがなくなるので、痩せるという仕組みです。
しかし、炭水化物は大切なエネルギー源です。脳の栄養になるグルコースは、炭水化物からできています。若い世代には特に摂取してほしい栄養です。ご飯を減らしておかずを増やすより、おかずを減らしてご飯を増やす方が、健康にはいいと思うんです。お米は家計にも優しいですし、最近では炭水化物を取る方が長生きになるという研究データも出てきています。
私は農業生産法人「株式会社賀茂プロジェクト」の代表も兼務しています。中山間地域で、お米やりんご、ぶどうなどを取り扱っています。立ち上げのきっかけは、地域の方々の声でした。地域には、高齢化や人口減少、担い手不足といった課題があります。弊社がここまで事業を続けてくることができたのは、地域の方のご理解やご協力があったからこそです。そこで、地域の力になるなら、ということで、法人立ち上げに至りました。跡継ぎ不在のりんご園の経営を受け継いだり、地元の大学と協力してブランド地鶏の開発を手掛けたりするなどの事業を行っています。
また、中山間地域でも循環型農業は可能だ、という1つのモデルにもなれたらいいなと思っています。今、農業のオートメーション化やIOT化が進んでいますが、中山間地域には難しい面もあります。たとえば、中山間地域は基本的にため池農業です。常に水が流れているわけではないので、水の供給を自動化するのは難しいんです。田んぼの面積も小さく、移動も多いので、スマート農業を導入するハードルも高いです。どうしても便利な平野部のみで機械化が進み、中山間地域は後れを取っている状況です。しかし、中山間地域は、日本の面積全体の約7割にものぼります。今後は、中山間地域の特徴を活かし、地域と連動して循環型農業をやっていかなければならないのです。
循環型農業には、生産以外の部分も重要です。賀茂プロジェクトでは、一次産業だけではなく、六次産業の加工や販売にも取り組んでいます。農家の方が独自で売り先を探すのは、なかなか難しい面もあると思います。そこで、これまでサタケが切り開いてきた販売ルートやネットワークを使い、販売先を探し、出口対策を行います。販売ができてこその循環型農業です。
また、賀茂プロジェクトを通して、農業者にとって本当に必要な機械は何なのかも見えてきました。そこで新たに開発したのが、ソフトグレインサイレージ(SGS)を作る機械です。ソフトグレインサイレージとは、収穫した稲を密閉保存し、発酵させた家畜飼料です。海外から輸入することの多いオオムギの代替飼料として活用できます。メーカーとしてだけでなく、農業者の目線にも立ち、今後の発展に貢献していきたいと思っています。
地域の空き家に住みながら、賀茂プロジェクトに参加している若者もいます。将来的に、彼らが独り立ちできるように、事業を発展させていきたいと考えています。軌道に乗せた状態で次の世代にバトンを渡せたら、関係人口も増え、地域活性化にもつながると思っています。