つい、お米を食べたくなる
そんなお話。
越後製菓株式会社
事業内容 :包装餅・鏡餅・米菓・米飯・麺類・惣菜等の製造販売
本社所在地 :新潟県長岡市呉服町1丁目4番地5
話者 : 取締役会長 星野一郎様
ウェブサイト : https://www.echigoseika.co.jp/
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「ふんわり名人」が米国系スーパーで大ヒット!現地バイヤーが認めるアメイジングな商品開発で米菓の普及拡大を目指す。

パリパリッと歯触りの良さとともにお米の香りが広がる、日本を代表するお菓子「米菓」。メインユーザーの高齢化や若者層によるお米の消費低迷が続くなか、海外市場獲得も必要です。新潟県の老舗米菓メーカー、越後製菓株式会社は、2005年に「ふんわり名人」を発売しその後韓国で大ヒット。さらに今年2023年10月には米国大手スーパーとの提携販売も実現させるなど、海外市場へ積極的に進出しています。食文化が日本とは全く異なる海外において、日本の米菓が受け入れられるには。越後製菓株式会社の取り組みや海外で通用する商品開発について、代表取締役会長の星野様へお話を伺いました。

 

 

地元バイヤーが大絶賛した米菓「MOCHI PUFFS」

弊社は70年前の1953年から米菓を製造してきた経緯があります。米菓とは、おかきやあられ、せんべいなど、お米やお餅を焼くなど加工した日本伝統のお菓子です。米どころ新潟県を代表する老舗米菓メーカーとして、越後の美味しい素材や風味を活かした商品を開発し、国内や海外に向けて米菓の魅力を伝えています。

 

弊社の商品開発へのポリシーは、既成概念にとらわれない商品を世の中に生み出すことです。2005年発売の「ふんわり名人きなこ餅」は、まさに革命的ともいえる開発によって誕生しました。それまでの米菓独特なバリバリ、ボリボリとした噛み応えにはない、口に入れた瞬間フワッと溶けてなくなるのが「ふんわり名人」の特徴です。実はこの食感を生み出すのには10年の歳月がかかっています。そして今年2023年10月、この「ふんわり名人」がアメリカテキサス州にある大手スーパー「H・E・B」(エイチ・イー・ビー)グループの「Central Market」(セントラルマーケット)との共同開発により、新たに「MOCHI PUFFS」(モチパフ)という名前で販売が決定し、すでに昨年度の輸出出荷額を上回る反響をいただいております。

 

日本のパッケージの多くは、素材や季節感を表す色味や、「モチモチ」「ふわふわ」といったシズル感を表すような商品名が使用されるなど、海外の食品パッケージに比べてやや抽象的です。そのため、日本のパッケージのまま現地で販売をしてもアメリカの市場では受け入れられないため、Central Marketのバイヤーであるエリック氏と約2年かけ、パッケージについて協議を重ねてきました。

 

「MOCHI PUFFS」のパッケージは、カラフルでパッとユーザーを引きつける見た目と、表に「グルテンフリー」を明確に表示させることで、現地ユーザーのニーズに応えています。エリック氏によると、「ふんわり名人は“アメイジング”な商品」とのこと。その独特な食感を生み出す弊社の技術や商品開発に興味を持っていただけたことが、今回の新たな市場獲得に繋がっています。

 

米菓製造の始まりは生麺作り

弊社は新潟県小千谷(おぢや)市にて、蕎麦を湯がいて販売する「日配業」で始まりました。この地方には名産とされる小千谷蕎麦というものがあり、創業者は毎日隣町へ片道4時間かけてリヤカーで運んでいたと聞いています。また当時農家では「賃餅」といって、杵のある場所へもち米を持ち込み、工賃を払って餅をついてもらうという風習がありました。実は、日配業は労力の割に利益が出ず、この「賃餅」をやるようになってから数カ月で日配業1年分の利益が出せたといいます。そこで、もともと赤飯の日配や切り餅を乾燥させて焼いた柿の種の製造をしていたこともあり、年末年始の一週間だけ「賃餅」を引き受けるようになり賞与分にしていました。

 

現在は無菌包装で日持ちする餅がスーパーなどで一年中売られています。しかし、通常のお餅は水分量が約43%もあるため、空気中の微生物が付着すると3日間ほどでカビが発生します。そのため少しでも冬場の利益を増やすためにも、ついたお餅を2カ月、3カ月と長持ちさせることが課題でした。

 

このように、カビや細菌といったいわゆる「微生物」は、普段目に見えない存在として当たり前のように私たちと共生しています。例えば好気性菌(こうきせいきん)といい増殖するために酸素を必要とする菌と、そうでない嫌気性菌(けんきせいきん)とでは全く性質が異なります。そのため弊社では微生物を研究し、菌を制御する方法や機械開発の研究にも力を入れてきました。

 

「アメイジング」な商品開発で海外市場に価値を生み出す

 

弊社にとって商品開発は、いわば機械開発と言っても過言ではありません。その一つに、お餅のような粘着力のある原料を扱う場合、設備の回転部と固定部の間にあるパッキンやオイルシールなど、表側に出ていない部分は通常の洗浄方法だけでは汚れを完全に落とすことができません。汚れたままにしておくと菌が繁殖してしまい、お客様に安心して食べていただける商品を提供することができなくなってしまいます。このいわゆる「ブラックホール化」を防ぐことが弊社の機械開発の根幹であり、既製品の生産設備との性能の違いの調査や、自社で設備の設計、製作、調整なども行うようにしています。

 

これら技術開発によって、弊社の加工技術をさらに極め、日本のお米を使用したお菓子や米菓を海外へ普及させていくことが、これからの時代を生き残る上で重要と考えます。さらに言葉の通じない海外との取引にはコミュニケーションも欠かせません。しかし、それ以上に商品のキャラクターが現地にはない唯一無二であることが大切です。今回、セントラルマーケットとの共同開発にたどり着いたのも、ジェトロ担当者が「ふんわり名人」を気に入って下さり、セントラルマーケットの本部へ「ふんわり名人」を持ち込まれたという偶然の出来事がきっかけではありましたが、バイヤーのエリック氏が、弊社の加工技術を見抜き、世界中どこにもない技術だと認めていただいたことも事実です。これからも、みなさんがまだ見たこともない“アメイジング”な商品を世に生み出し続けることで、日本のお米を使用した米菓の魅力をさらに広められるよう製品開発に取り組んで参ります。

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