つい、お米を食べたくなる
そんなお話。
株式会社フジタ精米人
事業内容 :醸造用原料米の加工・販売、米卸(普通精米・無洗米)、酒造米委託精米、
山田錦産地集荷、ふくほのか販売
本社所在地 :兵庫県小野市河合中町字蓬莱野83-12
話者 : 代表取締役 藤田 覚様
ウェブサイト : https://www.seimind.com/
カテゴリー:

天候等の要因で一人前ではない未熟粒という理由から食用米としては失格の「くず米(特定米穀)」 。 それらをもう一度一人前に仕上げ直し、新たな使用用途拡大に力を注ぐ。

心をこめて精米する人の会社、人ありきの人間力の会社を目指し、商人(あきんど)という読み方からも発想を得て、フジタ精米人(せいまいんど)という社名へ平成6年に変更し事業を展開している。創業社長が昭和23年に農家が収穫したコメの委託精米、すなわち現在のコイン精米機の業態からスタート。藤田覚(さとる)様自身は、キリンビールに入社し支店営業成績1位を獲得するなどの活躍を経て参画。培ったノウハウを元に、米の新たな可能性を様々な角度から広げておられる話を伺いました。

SDGsという言葉がない時から、自然と意識してやっとったんでしょうね

食べる米としては失格した米であるくず米、網下米、ふるい下米の正式な総称は特定米穀と言います。それをもう一度生き返らせたのが我々の業界です。食べる米としては駄目ですけど、その分コストが安く、米を原料とする食品メーカーにとっては大事な原料になったんです。

 

くず米って、昔から30万~40万トンぐらい出ていたんですけど、田んぼの肥料に使っていたんです。それはもったいないということで、東北・関東・北陸などの米どころは、新潟の米菓屋さんや信州の味噌屋さんでせんべいや味噌に利用していたんです。ただ、西日本は特にそんなに大きなメーカーがないので、そのままくず米は田んぼに捨てて肥料にしていました。なんとか利用できる方法はないかと、うちの創業社長が「くず米を清酒用に使えないか?」と思いつき、清酒メーカーさんと一緒に研究を始めました。その頃はまだ清酒用は食べる米と同じ米を使っていましたから、それが醸造用清酒用に使った特定米穀のはしりだったと思います。SDGsという言葉がない時から、自然と意識してやっとったんでしょうね。

当然コストは安いので、最初のうちは地方の大手酒造メーカーさんの下請け的な未納税蔵がコストを抑えられるということで普及しました。それが今から20年ほど前から、大手清酒メーカーそのものが経済酒クラスに特定米穀を使い出す流れになってきました。

また、焼酎は米焼酎だけじゃなく、芋焼酎も麹はほぼ全部米なんです。基本的には麹が米で、かけ用が芋なんですね。米焼酎業界全体よりも芋焼酎業界全体の方が米の使用量が多いぐらいです。私どもでしたらそれ以外にも玄米酢とか、最近では米の粉を使ったパンとかケーキとかそういった需要を広げつつあります。

これらが、我々の米に対する取り組み・考え方の原点になっています。

食生活をガラッと変えるんじゃなく、“食生活の中に米を入れていく”ことが大事

数年前から食パンブームがあったでしょう?朝食の時に、米よりも手間がかからない食パンが普及していると思うんです。なので、それに代わる米の商品ができたらいいなってずっと思っていました。米粒の状態でパンの形になったものをトースターで焼いて味噌とか塗ったら、もっと朝食で食べてくれると思うんです。あと、麺がすごく流行りましたよね。これにとって代わる米のポジションを作らないといけないなと思いますね。麺の中に米粉を入れるとか、そういう風に工夫していかないと。食生活をガラッと変えるのではなく“食生活の中に米そのものや米を原料にする食品を入れていく”、そういったものを開拓していかなければいけないなと思います。

やっぱりお米は日本人の原点ですし、日本も今の1.5倍お米の消費量を上げたいですね。昔からお米を使った色んな食品を考えてきたでしょう?清酒に始まってせんべいもそうですし味噌もそうですし。日本人の生活に切っても切り離せない素材だと思うので、もっともっと米のありがたさっていうのを見直して可能性を広げていかないと、と思います。

生産者・加工業者・消費者それぞれの思いが同じベクトルを向けば、米の活用が広がる

生産者には生産者の思いがあって、米穀の加工業者には加工業者の思いがあって、消費者には消費者の思いがあって・・・。それが一つのベクトルに向かっているかと言うと、まだその領域には至っていない。

でも、同じ所に向かっていけばすごい力が発揮されるんじゃないかなと思います。そして、一つのベクトルに合わせていけるのが間にいる僕らなのかなとも感じています。

そこが変われば生産者の「美味しい!こだわった!どうや!」だけじゃなくて、消費者が何を求めていて、何を頑張ればいいのかがわかると思います。

“需要に応じたものを作っていく”っていうのができていけば、もっと米の活用が広がっていくと思います。

フジタ精米人さんの今後

次世代を担う藤田拓久(ひらく)様にお伺いしました。(左)

創業社長の起業時の想いがあってそれをつないだ現社長の想いがあるんですけど、僕はもう1度原点に立ち帰ってみたいと思っています。創業社長の考えっていうのはSDGsの考えにも適してると思うし、時代うんぬんでなくて、普遍の概念があると思う。僕らの一番の武器は、特定米穀を初めとする、今まで捨てられていたものの有効活用ができることなのかなと。

 

兵庫県産米に関して言うと、ありがたいことに年々兵庫県産指定での需要が増え、集荷量も増えていっています。 “兵庫県産米シリーズ”、“特定米穀を選別したものを得意とする業務用米”、それが主力の2本柱です。

酒造メーカーで培ったノウハウを活かしつつ、それだけじゃなくて味噌や米菓などに幅を広げていきたいですね。コロナで酒造メーカーさんが落ち込んでしまっているので、ならば需要があるところに。培ったノウハウがあるからこそ、そこは戦えるかなと思っているので、武器を活かしながら如何に伸ばしていけるのかを考えています。

 

メールからのお問い合わせ