つい、お米を食べたくなる
そんなお話。
白鶴酒造株式会社
事業内容 :清酒・焼酎・リキュール・味醂・その他酒類の製造、販売など

本社所在地 :兵庫県神戸市東灘区住吉南町4丁目5-5
話者 : 水谷仁様
ウェブサイト : https://www.hakutsuru.co.jp/
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伝統と革新の酒造りで、さらなるブランド育成と品質の向上を目指す 

280年にわたり酒造りひとすじに歩んでこられた白鶴酒造株式会社。伝統を重んじながらも、時代の変化を柔軟に受け入れ、革新的な酒造りに挑戦され続けています。日本酒の出荷数・輸出数ともに国内トップに君臨。今回は、日本酒業界のリーディングカンパニーである白鶴酒造株式会社の水谷仁様に、酒造りにかける想いや品質へのこだわり、オリジナル酒米「白鶴錦」などについてお話しいただきました。 

江戸時代中期から続く、日本を代表する老舗日本酒メーカー 

当社の歴史は、江戸中期の寛保3年に材木商人の治兵衛が酒造業を手がけたことに始まります。治兵衛が蔵を構えたのは、良質の水と冬の寒気が酒造に適した、灘・御影郷(現・兵庫県神戸市)でした。創業から4年後に「白鶴」は誕生し、今でも社名として引き継がれています。 

日本酒を世界へ広めようと明治33年に第5回パリ万博に参加し、現在の輸出相手国は57カ国に及び、国内でトップクラスの輸出量となっています。江戸時代から続く伝統を継承しつつ、バイオテクノロジーといった最新技術なども積極的に取り入れるのが当社の特徴です。 

現在、当社には3つの蔵がありそれぞれ役割が異なります。本店2号蔵では伝統的な製造方法で吟醸酒を中心に製造しています。ここでは毎年夏場には使わない日本酒のタンクを利用して梅酒を造っています。大吟醸の寒造りの完了時期と、梅の収穫時期が重なるため、50年ほど前から始めた取り組みです。本店3号工場では年間を通して普通酒を、旭蔵では2種類の原料処理設備を使い、純米酒と普通酒を中心に製造しています。 

大正初期に建造された本店1号蔵は昭和44年まで稼働していましたが、今は酒造資料館として一般の方に酒造りの工程などを紹介しています。 

伝統と革新を兼ね備えた酒造り 

 

私たちの酒造りへのこだわりの一つが、「変わらないおいしさ」です。時代の移り変わりとともに、日本酒に求められる香りや味も少しずつ変化しています。ここ数十年でも濃醇辛口から淡麗甘口へとトレンドは大きく移り変わりました。 

時代が変わっても、お客様に「変わらないおいしさ」を届けるため、「まる」などの定番商品も微調整によって適宜アップデートしています。一方で、新商品に関してはトレンドをしっかり反映させます。伝統と革新のバランスを取っていることも当社の特徴です。 

厳しい品質基準で酒米を選定

 

当社では酒米選びにも余念がありません。酒造りにおいて、酒米は水と並ぶ大事な原料であり、質に大きな影響を及ぼします。そのため厳しい品質基準をクリアしたものだけを用いています。 

なお、米の出来栄えは天候や環境によって左右されるため、生産者様から「品種を切り替えたい」という申し出を受けることも少なくありません。その際は、打診された品種が酒造りに適しているかを見極めるため、最低2年かけてリサーチを行います。まず玄米特性や精米適性の確認と当社研究部門での少量での試験醸造を実施し、酒米品種間の違いを確認します。その後、蔵にて実際に仕込む数量で試験醸造を行い、発酵性やお酒の成分への影響を確認します。そこで規定の品質を満たしていることが確認された場合のみ、品種の切り替えが承認されるという流れです。なお、米は品種や生産年度で成分が異なるため、安定した品質のお酒を造るにあたっては高い技術が必要となります。 

 生産者とのコミュニケーションにも注力 

日本酒を安定供給するためには、良質な酒米の安定確保が不可欠です。当社では、北は北海道から南は鹿児島まで、さまざまな地域のJAや米卸売業者などを通じて契約し、酒米を仕入れています。この体制により、万が一どこかの地域で台風や大雨が生じたとしても、必ず酒米を仕入れることができます。 

また生産者様とのコミュニケーションも当社が大切にしていることです。年に1回以上は契約先の産地を訪問し、意見交換を行っています。私たちの酒造りへの想いを生産者さまに直接お伝えできるうえ、「育ててもらったお米でいかにおいしい酒を造るか」と使命感がわくため、貴重な場となっています。 

さらなる品質向上を目指し続ける 

当社では古くより、酒米の代表的な品種「山田錦」を使用してきました。そうした中、1995年に「山田錦に勝るとも劣らない酒米を生み出す」という想いのもと、酒米の開発に着手しました。 

さまざまな研究を重ね、山田錦の母にあたる「山田穂」と「渡船2号」を交配させ、兄弟品種を作ることから進めました。数百系統を超える米を収穫し、そこから選りすぐった品種が「白鶴錦」です。開発から8年目のことでした。平成18年に兵庫県多可郡で契約栽培を開始し、平成19年に農林水産省にて品種登録されるに至りました。 

現在平成27年に設立した「白鶴ファーム株式会社」をはじめ、兵庫県下で400t以上の白鶴錦を生産しています。白鶴錦は山田錦の弟として位置付けていますが、外観上は父親品種にあたる「渡船2号」に近く、山田錦に比べて酒の口当たりが柔らかに仕上がる特徴があります。  

日本酒は原料がシンプルである一方、辛口や甘口、フルーティーなど味や香りのバラエティーは実に豊富です。その分、作り手の技量によって多様な味わいが生まれ、質が左右されるのも面白い点です。これこそ日本酒の魅力と言えるでしょう。これからも伝統を守りつつ、時代のニーズに合わせた商品開発を行い、日本酒の幅を広げていきたいと思います。 

 

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