つい、お米を食べたくなる
そんなお話。
岩塚製菓株式会社
事業内容 :米菓の製造並びに販売
本社所在地 :新潟県長岡市飯塚2958番地
話者 : 取締役購買部長 小林晴仁様・ソーシャルコミュニケーション室長 中静幸徳様
ウェブサイト : https://www.iwatsukaseika.co.jp/
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米菓を通して「縁」をつなぎ、地域の発展と日本の伝統文化を守り続ける。

米どころとして有名な新潟は、お煎餅やあられ、おかきといった米菓の生産地としても有名です。長岡市にある岩塚製菓株式会社は、地域を産業で豊かにしようと、水飴を製造する会社として創業。その後米菓メーカーとして、現在は国内外でその味と品質を広めています。そんな岩塚製菓株式会社の地域貢献への取り組みや、お米の魅力についてお話を伺いました。

食の安心安全を提供し、地域に貢献

弊社は、米菓を通して日本の伝統的な食文化を守り、新たな価値を創造し続け、人々の豊かな暮しと地域の発展につながる事業活動を行っています。

 

その一つが、人々へお米のおいしさと安心安全な食の提供です。弊社の煎餅やおかきの原料には、すべて国産のお米にこだわっています。ご存じの通り新潟県はお米の産地であり、流通しているお米の品種もさまざまです。弊社もお米の流通が政府の管理下であった一昔前までは、使いたいお米を自由に仕入れることができなかったため、北海道や九州といった県外のお米を原料として使っていたこともありましたが、流通が自由になった今は地元のお米を優先的に使っています。

 

そして、仕入れ量もなるべく食品ロスにつながらないように心がけております。お米はその年の気候や栽培の仕方によって、量や質が変化します。そのため生地の状態や膨れ方など、開発段階で出来具合を確認し、その都度お煎餅やおかきに合うお米を必要な量だけ仕入れています。

 

実はこのような取り組みは、創業時から続く「地域を産業で豊かにしていきたい」という地域に対する貢献への思いが深く関わっています。

 

縁のつながりから、世界の「BEIKA」へ

弊社はもともと、米菓を製造する企業ではなく農産加工会社として始まりました。ここ飯塚地区はとても雪深い場所で、冬になると一家の大黒柱である男たちが出稼ぎに出ていくという習慣がありました。そのためなんとか状況を変えようと立ち上がったのが、創業者である平石金次郎、槇計作です。この地を豊かにするため産業を始めようと、澱粉を原料とする水飴作りを始め、その後大手メーカーとの差別化を図るため煎餅作りを習得し、試行錯誤を繰り返しながら現在の米菓企業へ発展してきました。

 

また弊社は、1983年より台湾から中国大陸に進出した大手米菓メーカー「旺旺」との技術連携により、世界中へ岩塚製菓の味と、日本の伝統的な米文化を「BEIKA」としてつなげています。旺旺はもともと缶詰の加工食品を製造する台湾の企業でしたが、弊社の技術を受け継ぐことで急成長を遂げ、現在は世界No.1の米菓メーカーとしてその地位を確立しています。

 

弊社の技術と品質が、旺旺との偶然の出会いをもたらしたわけですが、これまでこのような多くの「縁」によって、今日の岩塚製菓として発展することができたと考えます。現在本社がある場所は、元岩塚小学校があった場所で、社長が幼少期を過ごした場所です。2004年に廃校になりましたが、その後、岩塚製菓が譲り受け、2005年に飯塚工場、2006年研究開発棟建設を経て、2021年に創業の地である故郷へと本社を移しました。このような機会を得たのもまた、創業者の「地域と共に生きる」という思いがつないだ「縁」だと思っております。

 

環境に配慮したものづくりで、日本の原風景を守る

弊社では、契約農家で作られたお米を全量買い取ることで、原料となるお米を安定的に仕入れるようにしています。また契約農家の方々とのコミュニケーションを大切にしており、年3回、出来上がった煎餅やおかきの品質を農家の方にも確認していただき、意見交換を行っています。農家の方々にとって、全国のスーパーで自分たちのお米が米菓という商品として消費者に伝わっていることを認知していただける機会となり、一緒に美味しいものを作ろうという励みになっているようです。

 

その他にも、JAや地元農家と共同で、お米の自然栽培にも取り組んでいます。自然栽培は、化学肥料や農薬を一切使わない栽培方法で、大量に雑草が混じるため労力が必要となり、天候や病気などのリスクもあるため、多くの農家では懸念されがちです。しかしこの難しいとされる自然栽培を、弊社では自社で田んぼを所有するのではなく、お米作りのプロである農家の方と指導のプロであるJAとの連携によって、2022年で6年目の収穫を迎えることが出来ました。

 

農薬を使わない自然栽培を始めた当初は、虫食い被害も予想していましたが、不思議なことに、農薬を使う慣行栽培よりも、自然栽培の稲は虫食いの被害にそれほど遭わないことがわかってきました。恐らく、化学肥料を与えずに育った稲は、虫が雑草と同じものだと認識していて、逆に肥料をたっぷり与えられた稲は、雑草ではない何か美味しいものとして虫が認識するため虫食いが発生すると考えられます。そのため自然栽培でできたお米は、単に美味しいお米というよりも、「素直なお米」という印象がありますね。

 

現在たくさんのブランド米が栽培される中、消費者はより美味しくて質の良いお米として、少しでも価値のあるものを求める傾向があります。そのため手のかかる自然栽培は、費用対効果が良くない理由から敬遠されることも多いです。しかし、弊社のように契約した量を全て買い取るなど、その価値が認められると販路市場を横展開できる可能性もあります。

 

また土壌が持つ自然の力だけで栽培する方法は、農薬や肥料を使わないため温室効果ガス低減や、昆虫と作物との生態系バランスを整えることで長期的な土壌環境の整備につながるなど、持続可能な開発目標SDGsになると考えます。そのような農家の方もより安心して良いお米作りができる仕組みを作ることで、日本にとって伝統的な文化やその土地の原風景を守ることにもつながるため、地域という個ではなく市や組織と連携することにより、さらに自然栽培のようなお米づくりを活性化できるのではないでしょうか。

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