つい、お米を食べたくなる
そんなお話。
菊水酒造株式会社
事業内容 :清酒製造販売、リキュール製造販売、その他食料品製造販売
本社所在地 :新潟県新発田市島潟750
話者 : 代表取締役社長 髙澤大介様
ウェブサイト : https://www.kikusui-sake.com/
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「人に、地球に、環境に配慮した」“モノとコト”づくりで、日本酒の新たな価値を創造し続ける。

さまざまな銘柄や種類が揃う日本酒。その味と品質は、原料となるお米や水だけでなく、土壌や空気といった環境にも左右されます。一方で、日本酒の需要はお米同様、時代と共に人々の価値観の変化によって変わってきました。その変化を捉え、日本酒の魅力を「モノ」と「コト」の両面から打ち出し、いち早く提供しはじめたのが、新潟県にある菊水酒造株式会社です。同社は2007年よりオーガニック大先進国であるアメリカのオーガニック認証を取得し、オーガニック清酒の輸出販売を開始。オーガニック清酒を造ることは「モノづくりとコトづくりの追求により、心豊かな暮らしを創造する」という経営理念を体現することの一つだと言います。

そんな菊水酒造が取り組む、「人にも、地球にも、環境にも配慮した」酒造りについて、代表の髙澤様へお話を伺いました。

 

日本酒の価値を「モノ」から「コト」へ

弊社は長年、造り酒屋として、品質を上げることが絶対的な命題であるという考えのもと、お客様に美味しい日本酒を提供し続けています。しかし2000年代に入った頃、どれだけ良いものを造り提供していても、商品が売れないという事態に頭を悩ませた時期がありました。当時、その理由のヒントとなったのが、自宅の倉庫で偶然発見した、年代物の車のカタログです。

 
1960年代から70年代にかけて、カタログでは車のスピードや性能を訴求していたのに対し、90年代になると、車があれば家族みんなが幸せになる、というように、車を持つことよりも購入後に得られる楽しさや面白さといった、ライフスタイルの変化を訴求していたのです。

つまり、車という“モノ”としての優位性ではなく、“コト”としての体験価値を、90年代ですでにお客様が求めていたにも関わらず、弊社は品質という“モノ”としての商品価値をずっと訴求し続けていたことに気づかされました。

 
飲んで楽しむ日本酒は、乗って楽しむ車と同じ「形」がある“モノ”です。そのためカタログの訴求の仕方と同じように、日本酒を飲むことでどのような作用をもたらすのか、どういう味わい方や飲み方の楽しみがあるのかといった、日本酒の体験的な“コト”を訴求する必要があります。

そこで、日本酒というモノづくりを基盤にしながら、お客様が求められる“コト”づくりを追求するための場として、2004年に菊水日本酒文化研究所を設立。日本酒を“モノ”と“コト”の両視点で捉えた商品の開発や文化的な価値の研究を行い、日本酒の新しい魅力を伝えています。

 

人と環境と地球に配慮した酒造りを米作りから考える

日本酒を醸す弊社にとって、原料となる日本のお米が、良質で安定的に生産されることは非常に大切なことです。そこで、自分たちができる環境への貢献活動として、有機米を使った酒造りを始めました。有機米は、農薬や化学肥料などの化学物質に頼らずに、自然の生命力を活かした栽培方法で育成されており、この有機米を原料に醸したのがオーガニック清酒です。

 
2007年には、アメリカ国内の販売基準とされるNOP(National Organic Program:米国農務省が定めたオーガニック食品についての統一基準)の認定を取得し、日本企業として初めて、オーガニック先進国であるアメリカの市場で販売も始めました。

 
オーガニック清酒は、地球環境についてお客様にも考えていただけるきっかけを提供できる手段として考えており、まさに私たちが追求する“コトづくり”のひとつです。このオーガニック清酒の需要拡大を期待して造り続けるのではなく、自然環境の恩恵を受けて酒造りをする企業として、環境に配慮した取り組みを行いたいという思いがあります。

 
今後さらに、オーガニック清酒を通じて、お客様だけでなく社員も暮らし方を見つめ直し、地球環境に対する気付きを得る、きっかけになればと考えております。

 

日本古来の文化をベースにした“コト”の開発で、日本酒の新たな価値を生み出す

オーガニックのお酒をつくっているのが「菊水日本酒文化研究所」の中にある「節五郎蔵」です。2004年に「有機自然との共存」をテーマに建てられた当研究所は、人と環境を守ることに最大限の注意を払った設計がされており、有機空間を持つ蔵として、日本で最初の認証を受けている施設です。

 
研究所では文化研究も行っており、全国各地から集められた日本酒に関する文献や資料、酒器などを展示しており、それらはあくまで美術的な価値や骨董的な価値としてではなく、情報収集を目的に集められたものばかりです。資料や文献からは、古来、日本酒が人々とどのように関わってきたのかを知ることができ、そこから得られた情報をもとに、昔の酒器を現代仕様に復活させてみると、いろんな使い方があることに気付いたり、昔の遊びや綺麗な所作といった古いものと新しいものを掛け合わせたりすることで、菊水酒造独自の“コト”として、新たな価値を生み出すことができます。

 

今後もこの研究所を通して、“モノ”と“コト”を融合した新たな価値を創造するとともに、日本酒の面白さを発信し続けることで、みなさまにも日本酒の素晴らしさや楽しさを伝えて行きたいと思っています。

 

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