つい、お米を食べたくなる
そんなお話。
木徳神糧株式会社
事業内容 :米穀事業、飼料事業、海外事業、コメ加工食品事業
本社所在地 :東京都千代田区神田小川町2-8 木徳神糧小川町ビル
話者 : 代表取締役社長執行役員COO 竹内 伸夫様
ウェブサイト : https://www.kitoku-shinryo.co.jp/
カテゴリー:

米の流通と共に、人々の健康と暮らしを守り続ける

私たち日本人にとって大切な主食であるお米。そのお米の安定供給を使命として長年米穀卸売業を営んできた木徳神糧株式会社は、お米の機能を活用し様々な事業を展開し、消費拡大にも積極的に取り組んでいます。2022年3月に代表取締役社長執行役員COOに就任された竹内伸夫氏に、ご自身の考える米穀卸としての役割やビジネスで大切にされていること、そしてサステナブルな作物でもあるというお米の魅力についてお話を伺いました。

 

「生産者と消費者を繋ぐ」ことが米穀卸の役割

木徳神糧は、米穀卸として「安全・安心なお米を安定的に供給すること」をモットーに、消費者の健康的な生活をサポートし、生産農家の方々の暮らしを守るべく、多種多様な取り組みを行って参りました。

 

まず、米穀卸として一番大切なのは、消費者がどんなお米を求めているかというニーズを把握し、生産者が作る銘柄毎の供給とのバランスを調整しながら、必要な所に、必要なものを、必要な量届けることです。

 

現在では様々な種類のお米が全国各地で栽培され、消費者は一年を通してお店に並ぶ沢山の美味しいお米の中から、自分好みの商品を選んで購入できます。

しかし、一昔前までは、お米の価格や販売量、流通経路などは全て政府の管理下にあり、今のようにいつでもどこでも好きなお米が購入できるような環境ではありませんでした。お米の価格を自由には決められなかったので、生産者のブランド米に対する生産意欲も高くありませんでした。1995年の食糧管理法廃止以降、政府による規制が緩和され、生産者はより高い値段で販売できる品質にこだわったお米を作るようになり、各産地でブランド米の生産が一気に加速しました。食味の良さに加え、地域限定の特色やこだわりを前面に打ち出したり、生産者の顔を米袋に載せたりするなど、自分達が作ったお米を消費者へ直接アピールできるようになり、生産者は競い合ってブランド米を栽培し、現在では非常に沢山のブランド米、高品質なお米がお店に並んでいます。

 

しかし、ブランド米だけがあれば良いというわけではありません。値段が高すぎれば大量に使う用途には不向きですし、粘りや甘味よりもスッキリした特性が求められるメニューもあるため、様々な種類のお米、特にコストパフォーマンスが高いお米には変わらず強いニーズがあります。

 

そのために弊社が今力を入れているのは、産地と協力した「つきあかり」や「にじのきらめき」といった多収穫品種の栽培推進です。「多収穫」という呼び名から、量が多く穫れるだけのお米と思われがちですが、それだけではありません。ブランド米に引けを取らない美味しさがあり、太く短い茎を持つため台風などの被害に強く、温暖化によって上昇している気温への耐性や、特定の病気に対する抵抗力などの特徴を持つという、時代のニーズに合った品種です。私たちは多収穫米の普及拡大に、各地の生産者、そして農協の皆さまと協力して取り組んでいます。

 

このように、マーケットインの視点で、消費者が「欲しい」と思うお米を生産者に「作りたい」と考えて頂けるような取り組みを行ない、生産者と消費者の繋ぎ役を担っています。

 

 お米を食べて健康に

時代と共に多様化した消費者のライフスタイルに合わせた商品開発も行い、少しでもお米の魅力を消費者へ伝えようとしています。しかし残念なことに、日本国内のお米の消費量は近年低下する一方です。

 

日本のお米の生産量は平成の初め頃まで年間1000万トンを超えていましたが、現在の生産量は約675万トン。そして、一人が一年に食べるお米の量は1962年の118.3kgをピークに減少を続け、2022年では50.7kgと約半分になってしまいました。年間50kgというと、一日当たりでは一人約一合(約150g)もご飯を食べていないという計算になります。ごはんをたくさん食べてお腹を膨らませていた時代から大きく変わってしまいました。

 

こんなにもお米の消費量が減ってしまった要因の一つは、単身者や共働き世帯が増えて利便性を求めるニーズが高まったことです。ご飯を炊こうとすると、お米を研いでから炊き上がりまで約1時間かかるため、忙しい世代は自宅でご飯を炊くよりも外食やレトルトなど時短で便利なものを選ぶようになりました。レンジで簡単に調理ができるパックご飯は、手軽さや保存性が消費者に受け、需要が伸びています。

 

また、主食にお米を食べる人の数が減ってしまったことも理由の一つです。パンや麺、シリアルなど、おかずが無くても食べられる主食が戦後に日本に入ってきました。日本人の食が多様化・欧米化し、お米が選ばれる機会が相対的に減ったことがお米の消費低迷に繋がっています。

 

さらに、炭水化物が糖尿病や肥満の原因になるという、お米への誤った認識が世の中に浸透してしまっていることも、米離れに大きく影響しています。

以前、社内向けのセミナーで登壇して頂いた柏原ゆきよ先生(通称「お米先生」)から「炭水化物60%、脂質25%、たんぱく質15%が日本人の体質に合ったカロリー摂取の比率だが、大半の方の食事は脂質が多く炭水化物が少なくなっている。余分な脂質を含まない特徴を持つごはんの量を増やし、バランスを良くすれば太らない」というお話を聞く機会がありました。それから私もその割合を守って食事の量を調整していますが、体重も増えず以前よりも健康的に過ごせています。

お米は健康を阻害するものではなく、日本人の体質に向いた健康的で優れた食材なのです。

 

そして、お米は日本人にとって単なるエネルギー源ではありません。

私たちが心も体も充実した健康的で楽しい生活を送るために欠かせない栄養の一つです。現代に生きる多くの人々は便利さを求めるあまり、大事な事を忘れかけている気がします。手の込んだ食事が良くて便利さを求めることが悪いというわけではありません。ただ、特にお子さんがいるご家庭では、多少の手間を掛けても、炊き立てのご飯と手作りのお味噌汁が食卓にあって欲しい。お米を作ってくれた生産者と、料理してくれた家族に感謝して食べる食事は心の豊かさも育むと思います。日々の食事を疎かにするのは残念です。もう一度原点に戻り、本当の健康とは何かということと、日本人の食をずっと支えてきたお米の価値を見直して欲しいと思います。

 

お米はサステナブルな作物

 

お米はもちろん食べるためのものですが、稲作で発生する稲わらやもみ殻、そしてお米を白米にする精米工程で出る米ぬかまで、全て有効活用されています。 例えば、もみ殻は保温材や肥料等の農業資材になりますし、稲わらは飼料(WCS)や正月のしめ縄、堆肥の原料として使われます。また、米ぬかも飼料や石鹸、化粧品というように様々な形に加工され、お米は食品以外でも私たちの暮らしに深く関わっています。

 

また、弊社の関わるビジネスとしては、お米を精米する時に出る米ぬかを製油メーカーに販売してこめ油を作ってもらい、油を絞った後の米ぬかは飼料として配合飼料メーカーに販売しています。そして、米ぬかを含んだ飼料は家畜に与えられて有機肥料になり、その肥料はお米の生産にも使用されます。 お米は食べるだけでなく幅広く活用され、また新しい産物として私たちのもとへ循環しています。このようにお米がサステナブルな作物であることを、もっとアピールする必要があると思います。

 

日本の稲作は、時代の流れと共に変わる気候や規制など、大きな環境の変化を超えて受け継がれて来ました。キラキラと水を湛えた春の水田や黄金色の稲穂が実る秋の田園風景を美しいと感じる気持ちは、日本人の遺伝子に根付いた共通の感情ではないでしょうか。お米作りを通して人々の交流が生まれ、経済も発展してきました。このような素晴らしい稲作とお米を、日本の伝統的な文化として私たちは次世代に伝えていくべきです。

 

今後も木徳神糧は生産者の皆さまと協力し、消費者の皆さまへお米を中心とした食と暮らし、そしてお米の新しい価値やサービスを提供していきます。これからもずっと、日本の食卓に美味しい「ごはん」が並ぶことを願っています。

 

メールからのお問い合わせ