つい、お米を食べたくなる
そんなお話。
南都食糧株式会社
事業内容 :米穀類・その他食品の販売
本社所在地 :奈良県吉野郡大淀町下渕760-1
話者 : 代表取締役 小川洋一郎様・米粉マイスター 小川朋子様

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お米農家さんと協力して取り組む、新規需要米への挑戦

今回お話を伺うのは、奈良県に拠点を置く南都食糧株式会社様です。インタビューの中では「お米しかできませんから」と謙虚に語られながらお米のこれからに向き合っておられます。地元の農家の方々とのつながりや新規需要米へのチャレンジなどお米に対する思いを伺ってきました。

 

取引先は200件以上、農家さんとのつながりを大切に

弊社が特に力を入れているのは、集荷です。

奈良県はお米の生産量が5万トン、消費が8万トンです。生産より消費の方が多い県です。少しでも多く集荷できるように、農家さんにチラシを配って回っています。昔からの信頼関係ができているのもあって、県内の200件以上の農家さんと直接取引をさせていただいています。

弊社の周辺は田んぼがない地域です。そのため、2000年代からは生産量が多い地域に倉庫を借りるようになりました。倉庫では、収穫したお米をいつでも引き取っているので、直接持ってきてくださる農家さんもいらっしゃいます。もちろん、こちらから集荷に伺うこともあります。

心がけているのは、できるだけ高い値段で買い取ること。袋代や検査代も弊社で負担していますし、現金払いも可能です。少しでも農家さんの負担を軽減できればと考えています。

2021年はお米の値段が暴落したため、お米が余ってしまっていました。とはいえ、毎年集荷をお願いしている立場上、買い取らないわけにはいきません。特に大規模な農家さんのお米は全て買い取らせていただきました。

 

新規需要米への参入

 

ただ、お米が余っている上での買い取りは、弊社にとって辛いものでした。そこで、翌年から米粉に使える品種を作っていただく契約に変更しました。新規需要米(将来的に安定した輸入が見込めない麦や大豆などの代替とするため、食用米や加工米とは異なる用途に活用されるお米のこと)への参入です。お米を米粉として活用するための取り組みで、農家の方々の手取りも増えるという利点があります。

ただし、参入に際しては1つハードルがありました。

新規需要米の生産者と契約するためには、先に需要先を見つけておく必要があったのです。せっかく生産できたとしても、受け入れ先がなければ販売することができないからです。1年間で生産する予定の米粉は数トン。膨大な量の米粉を取り扱っていただける業者を探すのは至難の業です。なかなか見つからず、諦めかけたこともありました。

しかし、思わぬところに解決の糸口がありました。農政局(地方農政局。農林水産省の出先機関のこと)の方に相談したところ、弊社が需要先になれるということでした。弊社は製粉メーカーなので、需要先として申請可能だったのです。灯台下暗しでした。弊社が需要先になれるなら、ということで新規需要米の契約をスタートさせました。これからの課題は、弊社が集荷した分を米粉としてしっかり販売することですね。がんばりどころです。

 

農家さんと手を取り合って

新規需要米への参入に際して、農家さんにあるお願いをしました。ヒノヒカリに加えて、米粉用にミズホチカラを生産していただきたい、というお願いです。ヒノヒカリは、奈良県で扱われているお米の中で一番多い品種です。対してミズホチカラは九州のお米です。お米にするとパサついてしまうので、もともとは飼料用のお米でした。しかし、アミロース(お米に含まれるデンプンの成分)が高く、パンに加工すればよく膨らむ利点がありました。米粉として活用するには最適な品種です。それに、ミズホチカラはヒノヒカリの後に収穫できます。一般的にヒノヒカリは10月中旬、ミズホチカラは10月下旬から刈り取りが始まります。時期が被らないので、「それであればできる」と納得していただきました。農家さんの了承を得て、新規需要米を本格的にスタートさせました。

この取り組みがうまくいけば、今後どんどん広めていきたいと思っています。

米粉には、パンやお菓子、麺など、加工先がたくさんあります。また、奈良県では2010年代から米粉パンの給食も始まりました。技術的な問題もあって、まだ比率は40%程度ですが、将来的には米粉100%のパンを給食で提供できるようになればと思っています。

 

米粉の需要を生み出すために

 

米粉は、昔と比べ、一般消費者にも認知度が高まってきていると思います。「グルテンフリーで、体にいい」というイメージが、世の中に浸透してきたのではないでしょうか。

ただ、初めて米粉に出会ったとき、扱いづらさを感じたのも正直なところです。

米粉の知識やレシピがなく、どのように米粉を使えばいいのか不透明なところがありました。売る側の私たちがそう思ったのですから、実際に米粉を手に取って何か作ってみよう、という消費者がどれくらいいるのか、不安になったこともあります。

米粉事業への参入を決めたとき、売るからには米粉について知っておかないと、と思いました。そこで、妻が東京に行き、米粉の活用法を学んできてくれました。

米粉を使ったことがない人に販売するためには、まずレシピが必要だと思います。オーブンがなくても、フライパンで作れるものや、簡単にできるもの。少しでも知識が増えれば、初心者でも簡単に米粉のお菓子が作れるようになります。売って終わりではなく、その後の使い方の部分でもお役に立てたら、嬉しいですよね。

 

お米の新たな需要を生み出すチャレンジ

最近では、新たな需要を生み出すために、お米を真空パックにしたノベルティ商品の販売をはじめました。内祝いの赤ちゃん米(赤ちゃんの出生体重と同じ量のお米をパックにしたもの)を始め、結婚やお正月のご挨拶やお供えなど、さまざまな用途で利用できるノベルティです。パックの印刷も弊社で行っているので、お好みのデザインをいただければ、オーダーメイドでの製作も可能です。最小で300g、30個からご注文いただけるので、一般のお客様から業者の方まで、プレゼント用として広くご好評いただいている商品です。

米粉にも、無限の可能性を感じています。パンやお菓子、麺など、加工先がたくさんあるからです。実際に商品が並ぶアンテナショップができたら、ますます消費も広がるのではないかとも思っています。

お米に関わる企業として、これからもお米のよさを広げていきたいと考えています。

 

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