つい、お米を食べたくなる
そんなお話。
千田みずほ株式会社
事業内容 :主食用及び加工用米穀の仕入・精米/加工及び販売など
本社所在地 :神奈川県横浜市保土ケ谷区峰岡町1丁目21番地
話者 : 代表取締役社長 千田法久様
ウェブサイト : http://www.gohansuki.com/
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「ごはん食のエキスパート」として、地球にやさしく、毎日安心して食べられるお米を食卓へ

千田みずほ株式会社は、大正8年に千田商店(屋号 豆や)として神奈川県で創業しました。業界の先頭に立って有機栽培を呼びかけ、近年は海外へも販路を広げるなど、精力的な活動を続ける同社。その中で大切にする地球環境への想い、海外事業で重要となる考え方、そしてお米の安定供給のために今後成し遂げたいことを伺いました。

 

時代に合わせてお米の販路を拡大 多用途対応、品質管理にもこだわる

当社は私の祖父が大正8年に興した会社で、最初は小豆を中心とした雑穀を扱っていました。その後の父の時代に米事業に参入しましたが、すでに米卸しの業者は数多くあり、後発だった当社は米を安く売るしか方法がない状態でした。しかしそれでは会社として成り立たないため、昭和55年に炊飯の会社を立ち上げました。米を炊いて付加価値をつけたうえでお客様に届けたいと考えたからです。

 

その後に私が会社を継いで、さらに幅広い挑戦を始めました。具体的には、新潟にある酒米の工場に特定米穀と主食米の精米ラインをつけ、得意先の米菓屋さん、お味噌屋さん、焼酎屋さんなどに販路を広げていきました。その結果、大手の米菓メーカーさんやお味噌メーカーさんとお取り引きができるまでになりました。

 

大手の企業ほど、お米の規格や品質は主食米より厳しい場合が多いです。当社では品質管理室を設け、しっかりとした品質のものをメーカーへお届けしています。品質管理の技術は主食米にも還元し、商品全体の品質向上につなげました。今では家庭用のお米からレストラン・スーパーなどで使う業務用のお米、酒米・米菓・お味噌の原料米、冷凍食品向けのお米なども販売しています。また、ぬかや飼料用米など様々な用途のものを取り扱っています。

 

有機栽培と出会い、地球環境に配慮した製品づくりを開始

当社は農林水産省に対して、有機栽培に関する働きかけをしてきた歴史もあります。有機栽培との出会いは、私が1998年にカリフォルニアへ視察に行ったときです。当時の日本にはまだ有機JAS制度がありませんでしたが、カリフォルニアは有機(オーガニック)栽培が盛んだと聞いて見に行きました。当時、アメリカの人たちが有機栽培の農産物を食べるのは健康に良いからだろうと考えていましたが、現地の学生に聞くと「将来の子どもたちに美しい地球環境を残すためにオーガニックの食品を食べるんだ」と言っていたのには驚きました。

 

未来の地球環境のために高いお金を出して有機農産物を食べる人たちの姿を見て、私たちも日本で地球環境をテーマにした農作物の作り方を広めたいと思いました。帰国後、すぐに日本の有機栽培について調べましたが、規格化された有機システムは存在しておらず「有機肥料を使えばすべて有機になる」状態なのだと知りました。

 

そこで農林水産省に働きかけ、日本でも欧米並みの有機制度を作るために有機栽培検討委員会が立ち上がり、その後に有機JAS制度が開始されました。有機栽培の基準が公開され、第三者が認証するという透明性の高い有機認証制度を作るのが目標でしたから、それは達成されたと思っています。ただし、有機JAS制度は一つの手段にすぎません。目的は地球環境を守ることですから、当社ではISO14001を取得したり、CO2の発生を少なくするための工場設備を導入したりして、できる限り環境に優しい方法で製品づくりをしています。

 

世界7か国への輸出では、各国に合わせたレシピ開発も展開

日本国内でのお米の売り方は、いわゆる3点セットと言われる年産・産地・品種の競争がほとんどです。しかし日本よりもマーケットが狭い海外は、国内の方法は通用しません。なぜなら、外国の方にとっては「すべて同じ日本のお米」という感覚だからです。それを確信したのは10年ほど前、ドイツの展示会に行ったときです。銘柄別に炊いたお米を現地の方に試食してもらいましたが、「何が違うのかわからない」という反応でした。そのときに「海外の方には別の方法で売り込まないと、本当の意味で日本のお米の良さを理解してもらえない」と思いました。

 

当社は現在、世界7か国にお米を輸出しています。シンガポールには現地法人を作り、精米と炊飯ラインを持つ工場を設けています。外国の方にとってはお米を炊くこと自体が難しく、水の硬度や温度の違いで炊きあがりの品質にばらつきが起こりがちです。そこを当社の工場で炊飯し、酢飯が必要な場合は酢合わせもおこなって、現地のスーパーなどに卸しています。お米自体を店頭に並べるより、炊飯までしたうえで納品する方が需要は多いと感じます。

 

工場のない輸出先では炊飯マニュアルを作成し、当社のスタッフが直接指導して品質を保持できるようにしています。例えば海外の米飯の流通は、菌の活動を抑えて安全性を高めるために温度を5度に保たなければなりません。その際の低温劣化を防ぐレシピを開発して、5度で10時間流通させても固くならない方法を現地に提供しています。きちんとレシピ通りに炊いてもらうと、他のお店とは全然違うと驚かれることも多いです。

 

やはり海外の方には、まず出来上がった製品を買って食べてもらうのが大事です。そして「美味しい」という体験が積み重なると、スーパーで日本の米を買って調理してみたいと思うようになるのではないでしょうか。ですから当社では、米を買ってもらうのが先ではなく、米で作った製品を買ってもらうのが先という考え方をしています。そしてその次の段階として、日本の米を料理の材料として買う形へと誘導できれば理想的だと思います。

 

価格と品質の安定、そして産地間競争をなくすことがお米の消費拡大につながる

農林水産省は、7年ほど前まではお米の消費拡大を目指して様々な取り組みをしていました。しかし最近は生産調整が主な取り組みとなっています。また、お米の新しい需要開拓として、お米とは違うジャンルの会社に新商品の開発を促すための補助金を出すなど、お米の生産量を減らさずに主食以外の部分に回すためにはどうすればいいかを検討しているようです。

 

しかし私は、やはりお米の消費拡大に軸足を置かなければ問題は解決しないと思います。令和元年産から令和4年産までは、お米の価格が乱高下しました。それにより消費も落ち込んでしまったことから、安定供給ができないと消費は伸びないと考えます。今必要なことは、まずお米の価格と品質を安定させること、そして産地間競争をなくすことです。つまり、年産・産地・品種での販売をやめるのが重要です。安く売るということではなく、安定した価格で5年10年と販売できれば、だんだん消費は伸びていくんじゃないかと思います。

 

自社ブランド商品を増やし、美味しいお米を安定的に届けたい

 

当社は、産地や銘柄にとらわれずにお米を売っていきたいと考えています。例えば、誰もが知るブランドである新潟県のコシヒカリは、日本全国のお米の約3%です。今はその少ないお米をみんなで取り合っていますが、農産物ですから天候不良などで急激に値段が上がったり、逆に豊作の年は値段が下がったりします。つまり、常に価格の荒波にもまれる仕組みになっているわけです。

 

これはコシヒカリに限らず他のブランドも同じで、数%の集合体でお米は成り立っていますから、それを平準化することで価格と品質が安定すると思います。ですので当社は、複数種類のお米をブレンドしたり、新しい品種のお米を栽培・出荷したりして、当社のオリジナリティを活かした自社ブランド商品を増やしていきたいと考えます。

 

私たちの商品のコンセプトは、「お子さんを持つ30代の夫婦がいるご家庭が、価格に翻弄されずに安心して美味しさを楽しめるお米を送っていこう」という考えがもとになっています。いつ買っても同じ値段で同じ美味しさが楽しめる商品を作るには、産地や品種ではなく私たちの技術が重要です。それだけの技術は蓄積してきたつもりですので、「当社のお米ならば安心して食べられる」と認めていただける状態を目指して、今後も商品づくりを続けたいと思います。

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